特殊事情がある遺産分割

13-6-1 未成年者がいる場合

未成年者(現在は19歳以下、ただし2022年(令和4年)4月1日以降は17歳以下)がいる場合、法律行為は通常はその親権者が法定代理人として未成年者を代理します。
しかし父親が死亡して相続が開始し、その相続人が配偶者と未成年者の子である場合には、母と子の遺産分割に関する利益が相反しますので、子のために特別代理人の選任が必要になります。
特別代理人の選任は、親権者が申立人となり、未成年者の住所地の家庭裁判所に対しておこないます。
未成年者の特別代理人が選任されて、はじめて遺産分割協議ができるようになります。
そして遺産分割協議書への署名・押印も選任された特別代理人が行うことになります。

13-6-2 行方不明者がいる場合

相続が開始した場合に、相続人の中に行方不明者がいる場合どうすればよいでしょうか。
行方不明者を除いた共同相続人間で遺産分割協議をしても協議は無効になります。
このようなケースでは以下の方法を取ることになります。
①不在者の財産管理人の制度
他の相続人は、行方不明者について分かっている最後の住所地の家庭裁判所に、不在者の財産管理人の選任の申し立てをします。
そしてこの財産管理人を含めて遺産分割協議を行うことになりますが、遺産分割協議の成立については家庭裁判所の許可が必要になります。
そして遺産分割協議が成立すると不在者の財産は財産管理人が預かることになります。
②失踪宣告
帰ってくる可能性が極めて低い場合には、法律上、不在者を死亡したものとして扱う方が良い場合があります。
通常、行方不明者の生存が確認されてから7年以上経過している場合に、家庭裁判所に申し立てます。
それが認められれば、行方不明となってから7年が経過した時点で死亡していたとみなす手続きを失踪宣告といいます。
失踪宣告がされれば、相続手続きにおいてその者が死亡していた場合と同様に扱います。
もし後日、本人が戻ってきた場合には、失踪宣告の取消を家庭裁判所に請求することができます。

13-6-3 国外居住者がいる場合

国内に住所地が無い者(国外居住者)である場合、国内に居住する他の相続人と手続きが異なるのは、遺産分割協議書の押印に際して登録された実印がないため、印鑑証明書が付けられないことです。
このような場合、居住地国によって少し違いはありますが、アメリカの場合を例にとりますと以下のような手続きを取ることになります。
まず居住地の日本国領事館で在留証明を受けます。
次にその領事館で署名と拇印による押捺をして、その署名と拇印が本人のものであることの証明書(サイン証明)の交付をうけて、その証明書を遺産分割協議書に添付をすることになります。
このサイン証明が印鑑証明書の代わりになる訳です。


13-6-4 成年被後見人がいる場合

成年被後見人とは、しっかりした判断を期待することがほとんど不可能なため、代わりに判断する人が必要だとして、家庭裁判所で成年後見人を選任された人をいいます。
このような成年被後見人が相続人となった場合に、他の相続人と遺産分割協議をすることは不可能ですので、成年後見人が本人に代わって遺産分割協議をすることになります。
ただ成年後見人もその相続に関する共同相続人の一人である場合には利益相反するので、特別代理人選任の申立てを家庭裁判所にすることになります。
成年後見人に後見監督人が選任されている場合は、後見監督人が成年被後見人に代わり遺産分割協議をすることになりますので、特別代理人の選任は不要です。

13-6-5 父母の相続が続いた場合

父が亡くなり、その遺産分割協議や相続税の申告が終わらないうちに母も亡くなり、相続が重複することがあります。
この場合、亡くなった父と母の相続人が同じであれば、相続人間で二つの相続を一通の遺産分割協議書として作成することができます。
しかし父に先妻の子がいる場合や母にいわゆる連れ子がいる場合には、それぞれの相続で相続人が変わってきます。
このようなケースでは、まず父の遺産分割協議(第一次相続)を終了させ、亡くなった母の取得財産を確定させたうえで、その後に母の遺産分割協議(第二次相続)をすることになります。
すこし疑問になるのは、この第一次相続で亡くなった母が取得した財産について配偶者の相続税軽減規定や小規模宅地等の相続税軽減規定適用ができるか否かということですが、一般的な相続との公平性を保つ理由から、適用ができる取扱いになっています。

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