相続の方法

8-1 まず遺産調査をしなければなりません。

相続が開始したら、相続人の方は亡くなった方の遺産を調査しなければなりません。
遺産には預貯金や土地・建物などのプラスの財産もあれば、借入金などのマイナスの財産もありますので、遺産の全体がどのようになっているかを知る必要があります。
預貯金の通帳や証書をまず集めます。預貯金の通帳の入出金の内容を見ればいろいろなことが分かります。
入金欄に証券会社からの入金があれば、株式や証券投資信託を保有していることが推測されますし、銀行への返済があれば住宅ローンなどの借入金のあることが推測されます。
また多額の出金があれば、定期預金に預け入れかもしれませんし、他の銀行に資金を移したのかも知れません。
それから郵便物を調べることによって、相続人の知らない金融機関と取引のあることや、生命保険に加入していることが分かったりします。
このようにして、亡くなった方の遺産が在りそうな場所に見当をつけます。
正式には自分が亡くなった方の相続人であることを証明する書類(戸籍謄本や法定相続情報証明)を付けて、金融機関などに残高証明書の発行を申請します。
また貸金庫がある場合には、上記の証明書に相続人全員の同意書を付けて、銀行が指定する方法で開けます。
このような方法で亡くなった方の遺産を調査し、相続するか放棄するかを決定します。
相続を放棄するかどうかを決定するための熟慮期間は、その人が相続人であることを知った日から3か月以内です。
ただ相当な理由があれば、この3か月という期間は家庭裁判所において延長されることもあります。

8-1-1 単純承認をする場合

単純承認とは亡くなった方のプラスの財産もマイナスの財産も、すべてを含めて承継する方法をいいます。
単純承認をするための手続きは特にはなく、相続人であることを知った日から3か月を経過すれば自動的に単純承認をしたものとみなされます。
注意をしなければならないのは、相続人が遺産分割協議の終了しないうちに、亡くなった方の遺産を一部でも処分してしまった場合には、単純承認したとみなされ、それ以後は相続の放棄や限定承認をすることはできなくなります。
相続の放棄などを検討されている場合には、十分に気を付ける必要があります。

8-1-2 相続の放棄をする場合

亡くなった方の遺産を調査したところ、預貯金や土地・建物などの財産よりも、借入金の額が大きく、相続した場合、差引マイナスになってしまうような場合には、家庭裁判所において相続の放棄をすることになります。
相続を放棄するかどうかを決定するための熟慮期間は、相続人であることを知った日から3か月以内ですが、調査が困難であったことなど相当な理由があれば、この3か月という期間は家庭裁判所において延長されることもあります。
相続を放棄した場合に注意しなければならないことは、相続権が放棄をした人から次順位の相続人に承継されることです。
具体的には、亡くなった父(母はすでに死亡)の相続人である子供が相続放棄の手続きを取った場合には、第2順位である祖父母に、第2順位がいない場合には第3順位の兄弟姉妹に相続権が承継されます。
このような場合には次順位の相続人になる方に、自分たち子どもが相続を放棄したことや、放棄した理由(財産、負債の状況)などをきちんと連絡して、親族間のトラブルが起きないように注意をする必要があります。

8-1-3 限定承認という方法があります。

亡くなった方の遺産についてまだ十分な調査ができていなくて、遺産全体がプラスになるかマイナスになるかわからない場合があります。
このような場合には限定承認という方法が選択できます。
限定承認とは相続財産をもって負債を弁済した後に余りがあればその財産を相続できるという制度です。
限定承認は、本人が相続人であることを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し出て行いますが、相続人が複数いる場合には相続人全員が共同しておこなう必要があります。
限定承認の手続きは相続放棄に比べて相当に煩雑ですので、事前に十分検討をする必要があります。
また限定承認により土地・建物を相続した場合には、その土地・建物が負債の返済に充てられて実際に手元に残らなくても、譲渡所得税を納税しなければなりません。
単純に分かりやすく説明しますと、当初2,000万円で購入された土地・建物の時価が現在4,000万円であり、これを限定承認により相続しましたが債務の返済に充てられたとします。
すると4,000万円の債務の返済ができたのですが、当初の購入価額と比較しますと2,000万円の値上がり益があったので、この値上がり益に対して譲渡所得税を相続人に対して課税するということになるのです。
限定承認については税務関係にも十分に注意が必要です。

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