生前贈与

12-1-7 生前贈与財産

相続又は遺贈により財産を取得した人が、被相続人からその相続の開始前3年以内に贈与により財産を取得していた場合には、その財産の価額を相続税の課税価格に含めて持ち戻し計算することになります。
またその贈与に関して贈与税を支払っていた場合には、一定の計算により相続税の範囲内で支払った贈与税の控除が出来ます。
注意が必要なのは基礎控除額(110万円)以下の贈与の場合です。この場合でも相続税の課税価格に持ち戻し計算しなければなりません。
なお被相続人から生前贈与された財産であっても、直系尊属から一括贈与を受けた教育資金、結婚・子育て資金のうち非課税の適用を受けた金額などは持ち戻す必要はありません。

16-3 生前贈与の活用

相続税の節税方法は色々な書籍で紹介されておりますが、ここでは代表的な生前贈与を使った方法を説明いたします。
生前贈与とはその名の通り、生きている間に自分の財産を贈与することにより、相続税の課税対象となる財産を少なくする方法です。
ただし生前贈与も税負担なしで無制限に行うことはできません。
贈与を受けた人は、贈与によって財産を取得した金額が一年間で合計110万円以内であれば、贈与税はかかりません。
しかし一年で110万円をこえる贈与を受けた場合には、その超えた額に対して累進税率で贈与税が課税されます。
年間110万円が分岐点になるのですが、場合によっては贈与税を負担してもそれ以上の節税効果が相続税の上で得られるケースもあります。
相続税の税率構造は10%~55%ですが、税率が55%の区分に該当するような多額の財産を所有している方の場合には、例えば年間710万円の贈与であれば、贈与税の税率は30%(直系尊属からの贈与であれば20%)の負担で済むことになりますので、税率差の分だけ相続税を課税されるよりも節税効果が得られます。
相続税の税率と贈与税の税率を比較して、どちらで課税を受けるのが有利なのかを検討することが必要です。

16-4 生前贈与の注意点

生前贈与を使った相続税の節税はよく用いられる方法ではありますが、注意点もあります。最も注意をしなくてはならないことは、贈与を受けた人がその受けた贈与をしっかりと認識していることと、贈与を受けた財産を受贈者が自由に処分できることが必要です。
子供名義の預金通帳を贈与者である親が作ってそこに預金をしても、通帳も印鑑も贈与者である親が管理している状況では贈与があったことにはなりません。
乳幼児や低年齢の孫などに贈与をする場合には、その親権者である親が代理人として受け取ることになりますが、しっかりと贈与契約書を作成のうえ、渡す人と受ける人(親権者)がそれぞれ自署押印をしたうえで、贈与があったことを相互に認識することが必要です。
また、生前贈与を毎年行っている途中で相続が発生したときは、その相続(遺贈も含む)によって財産を取得した人は、相続開始から3年以内に贈与によって取得した財産は相続によって取得したものと考えて、相続税の計算を行います。
この規定は「相続開始3年以内の生前贈与加算」といいますが注意が必要です。
高齢になればなるほど相続の話はしにくくなる傾向があるので、資産家の方たちは元気なうちから将来の相続について考え、早めに対策を取ることが必要です。

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