遺産分割ができない場合

15-1 家庭裁判所に調停の申し出をし、また審判を受けます

相続が開始した場合、被相続人が生前に記した遺言書があれば基本的にはそれに従って遺産が分割されます。
遺言書がない場合には、相続人間での話し合い(遺産分割協議)によって、その取得者を決めていきます。
しかし相続財産が多い、相続人が多い、相続人同士が疎遠である、など様々な理由で相続税の申告期限までに遺産分割ができないケースもあります。
被相続人の遺産について相続人間で話合いがつかない場合には、家庭裁判所の遺産分割の調停又は審判の手続を利用することができます。
調停手続を利用する場合は、遺産分割調停事件として申し立てます。
この調停は相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てるものです。
調停手続では、当事者双方からの意見聴取や資料提出、財産について鑑定を行うなどして事情をよく把握したうえで、各当事者がそれぞれどのような分割方法を希望しているか意向を確認し、解決のために必要な助言を受けながら、遺産分割の合意を目指し話合いが進められます。
なお話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始され、裁判官が遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して審判をすることになります。
なお遺産分割調停の申立には費用がかかり、相続人一人につき収入印紙で1200円の負担が発生します。

15-2 申告期限までに分割ができない場合、どのようにすればいいのですか

相続税の申告期限は、相続開始があったことを知った日から10か月以内です。
ただしこの期間内に遺産分割協議がまとまらないケースもあります。
遺産分割協議がまとまらない場合には、財産のすべてについて未分割または財産の一部について未分割のケースがありますが、遺産が分割されていない状況であっても相続税の申告期限の段階では一度申告が必要です。
この場合、未分割の財産はすべての相続人が法定相続分で取得したものとみなして申告をします。
その後、遺産分割協議が整った段階で各相続人の税額が変わるときには、相続税額が増える相続人は修正申告、相続税額が減る相続人は更正の請求を行います。

相続税の規定には税額を軽減する様々な規定があり、代表的なものは配偶者の税額軽減と小規模宅地の減額です。
前者の規定は、被相続人の配偶者は取得した遺産のうち法定相続分相当額または1億6千万円までは相続税がかからない規定です。
後者の規定は被相続人が居住や事業のために使っていた土地について、基本的に同様の用途で使うために相続人が取得した場合には、土地の評価額を50%~80%減額できる規定です。
ただしこれらの規定は、遺産が分割されていないと使うことができない規定であるため、相続税の申告期限において遺産が未分割の場合には『3年以内の分割見込書』を作成して、申告書に添付のうえ一緒に提出をすることが必要です。
この書類を提出しておくことで、遺産分割ができた時点で上記の規定の適用を受けることができます。

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