有価証券の評価

12-1-4 有価証券等の評価方法

まず相続財産として残っている有価証券等の存在を確認します。
証券会社や銀行等の残高証明書、預り証、配当金支払通知書、特定口座年間取引報告書などから、被相続人が保有していた株式や債権などの種類、口数、株数等を確認する必要があります。
そして証券会社や銀行では「相続用」の残高証明書を発行してもらいます。

相続人の方が希望すれば、保護預かりの投資信託などは相続が開始した日現在の解約価額、為替レートなどの記載や、上場株式については相続が開始した日の相続税評価参考価格を記載してくれたりします。
これらの残高証明を取るには一定の日数がかかる場合もありますし、証券会社や銀行によって手続きや必要書類が異なる場合もあるので、あらかじめ預け先の証券会社や銀行などで確認が必要です。

株式の価額は、上場株式、気配相場等のある株式及び取引相場のない株式の別に、また株式銘柄の異なるごとに1株単位で評価します。
主なものとして上場株式と取引相場ない株式の評価について概略は次のとおりです。

12-1-4-1-1 上場株式の評価方法

上場株式は市場で取引が行われ、その取引価格がそのまま時価を示しているといえるので、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期(被相続人死亡の日)の次の①の価額によって評価します。
ただし①の価額が②~④のうちの最も低い価額を超える場合には、その最も低い価額で評価します。
 ① 課税時期の最終価格
 ② 課税時期の属する月の毎日の最終価格の平均額
 ③ 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の平均額
 ④ 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の平均額
(最終価格とはいわゆる終値のことです。また、その株式が2以上の金融商品取引所に上場されているときは、納税者が選択した金融商品取引所の公表する額により評価します。)
なお課税時期が土日・祝日・年末年始などで最終価格がない場合やその株式に配当落ち・権利落ちがある場合には、一定の修正が必要になります。

12-1-4-1-2 取引相場のない株式の評価方法

中小会社の株式は大会社の株式と違って取引相場がありません。
そのため取引相場のない株式には、市場取引や証券会社の店頭取引で成立するような取引価格というものがありません。
仮に実際に取引があったとしても特定な当事者間の取引で成立した価格であって、その価格を市場で取引されるような客観的な価値と同じものとして評価とすることは適当ではありません。
また、取引相場のない株式の発行会社の事業規模は大小様々で、株主構成も様々です。
そこで取引相場のない株式の評価については、その評価する株式の発行会社の規模に応じて、大会社、中会社、小会社に区分し、その規模区分に従ってそれぞれの会社に適用する原則的な評価方法(原則的評価方式)を定め、その例外として、少数株主などの支配権のない株主の取得した株式について特例的な評価方法(特例的評価方式=配当還元方式)が定められています。

1.原則的評価方式
 ①大会社・・・類似業種比準方式(純資産価額方式選択可)
 ②中会社・・・類似業種比準方式と純資産価額方式との併用方式(純資産価額選択可)
 ③小会社・・・純資産価額方式(併用方式選択可)
※類似業種の業種目・業種目別株価など評価するために必要な資料などは国税庁ホームページで閲覧できます。

2.特例的評価方式(=配当還元方式)
同族株主以外の株主が取得した株式は、その取引相場のない株式の発行会社の規模に関わらず原則的評価方法に代えて配当還元方式で評価します。
配当還元方式とは、その会社の株式を保有することによって受ける利益、すなわち配当金額を、一定の利率で還元して元本である株式の価額を求めようとする方式です。

12-1-4-1 利付公社債の評価方法

公社債とは国や地方公共団体、事業会社が資金調達のために発行する有価証券です。
銘柄ごとに券面額100円当たりの単位で評価することになっています。
利付公社債については、以下の①~④の区分に応じてそれぞれ評価します。

① 金融商品取引所に上場されている利付公社債
評価額=(課税時期の最終価格+税引後の既経過利子の額)×券面額/100円
  ※算式中の最終価格、既経過利息の額は、券面額100円当たりの金額です。
※「最終価格」は、日本証券業協会において売買参考統計値が公表される銘柄として選定されたものについては、金融商品取引所が公表する「最終価格」と日本証券業協会が公表する「売買参考統計値(平均額)」のいずれか低い金額を用います。
② 日本証券業協会において売買参考統計値が公表される銘柄として選定された利付公社債(①を除く)
評価額=(課税時期の平均値+税引後の既経過利子の額)×券面額/100円
※算式中の平均値及び既経過利子の額は、券面額100円当たりの金額です。
③ その他の利付公社債
評価額=(発行価額+税引後既経過利子の額)×券額面/100円
※算式中の発行価額、既経過利子の額は、券面額100円当たりの金額です。
④個人向け国債
評価額=額面金額+経過利子相当額-中途換金調整額

12-1-4-2 投資信託受益証券の評価方法

証券投資信託の受益証券は、課税時期において解約請求等を行ったとした場合に支払いを受けることが出来る価額により評価します。
例えばMMFなどは次の算式により計算した金額となります。

上記以外の証券投資信託の受益証券については次の算式により計算した金額となります。

また証券投資信託の受益証券の中には、金融商品取引所に上場されているものもありますが、このような受益証券についは解約を前提とせず取引価格により市場での取引が可能ですから上場株式の評価方法に準じて評価します。

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