相続人の確定

7-1 相続人の確定方法は

遺産分割協議をするためには、その前提として、亡くなった人の相続人が漏れなく確定されている必要があります。
そして相続人を確定するためには、まず亡くなった人の除籍謄本を取ります。
平成6年の戸籍法改正により戸籍のコンピュータ化が行われましたが、この戸籍には現時点で籍を有する者だけが記載されていますので、すでに徐籍された者を確認するには改製原戸籍を取る必要があります。
被相続人の改製原戸籍に「……より入籍」とあれば、その「……」の戸籍を出生時にまでさかのぼって収集していきます。
そして被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本を入手し、相続人に漏れのないことを確認する必要があるのです。
土地、建物といった不動産を相続した場合に、その不動産登記の名義を変更する場合にはこの出生から死亡までの戸籍謄本が必要になりますし、また預貯金、株式、証券投資信託などの解約、売却、名義変更についても同様です。
一方、相続人については相続の発生時に生存していることが分かればよいので、戸籍抄本で足ります。
戸籍の附票という言葉をよく聞きますが、この書類はその戸籍に記載された方の、住所の変遷が記載されている書類で、本籍地の市区町村に請求して取得できます。
所在が分からない相続人の方と連絡を取りたい場合や、過去の住所を一気に証明したい場合などに活用します。
相続の手続きについて専門家に依頼する場合には、一定の資格者については職務上の必要に基づいて独自に戸籍謄本などを請求することが可能です。
弁護士は法律事務全般、司法書士は登記事務、税理士は相続税申告そして行政書士は遺産分割協議書の作成などの業務に限って認められています。

7-2-1 法定相続人とは

法定相続人とは、亡くなった人の遺産を相続できる権利を有する人をいいます。
法定相続人は配偶者と血族相続人に区分されます。
配偶者は常に相続人となりますが、法律上婚姻している者に限られますので、内縁関係にある者などは含まれません。
一方、血族相続人は次の第1順位から第3順位までのうち、順位が早い者のみが法定相続人になります。
第1順位 子(またはその代襲者)
第2順位 直系尊属(亡くなった人の父母などで亡くなった方と親等の近い者)
第3順位 兄弟姉妹(またはその代襲者である甥、姪)

7-2-2 代襲相続人と養子について教えてください

代襲相続人とは16(1)でも記載していますが、今回の相続が発生する前に、血族相続人の第1順位である子供が死亡していた場合には、その子供の子供(亡くなった人からは孫)がその相続権を引き継ぎ代襲相続人となります。
この代襲相続人の相続権は、孫が亡くなっていた場合には再代襲として、ひ孫に引き継がれます。
血族相続人の第3順位である兄弟姉妹の場合も同様に、その兄弟姉妹の子供である甥、姪も代襲相続人となります。
しかし兄弟姉妹の場合、再代襲は認められていません。

養子は縁組の日から嫡出子と法律上同じ扱いになりますので、血族相続人の第1順位となります。
また養子は実際の父母との親子関係は維持されますので、 実父母の相続に関しても法定相続人となります(特別養子縁組の場合は除きます。)。
ただ相続税の計算のうえでの養子の数は制限されていて、亡くなった方に実子がある時は1人、無い時は2人までとされています。
この養子の数の制限は遺産に係る基礎控除の計算のほか、生命保険金等や退職手当金等の非課税限度額の計算にも適用されます。
もちろん民法上、何人を養子にするか制限はありません。

7-2-3 非嫡出子、胎児がいる場合、また認知争いがある場合は

非嫡出子とは、法律上、婚姻関係を結んでいない男女の間に生まれた子をいいます。
父親の相続に関して法定相続人となるためには、父親がその子を認知していることが必要です。認知することにより非嫡出子となります。
非嫡出子の法定相続分は嫡出子と同じです。
平成25年最高裁判所で、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分1としていた民法の規定は憲法に違反するとの判決が出たため、この規定を削除しました。

胎児は相続に関しては例外的に 民法上生まれたものとみなして相続権を認めています。もし相続が発生した直後に生まれた子に相続権が認められないと、大きな不利益を被ることからこのような法律上の取扱いになっています。
しかし胎児が死体で生まれたときは、この規定は適用しないとなっていますので、無事生まれたか、生まれなかったで、法律上の取扱いが大きく変わってきます。
死産の場合には相続権はありませんが、出産後しばらくして死亡した場合には相続権はありますので、その親が死んだ子の相続人となります。

亡くなった人の子供であることを裁判所など認めてもらう認知の争いがある場合には、その判決の確定を待って相続人が確定することになります。
子供と認知された判決が確定した場合、それ以前の相続人が兄弟姉妹だけであったケースでは、相続人が第1順位の子供となるので、第3順位の兄弟姉妹は相続人からは外れることになります。
また相続人が配偶者のみであったところに、子供が認知された判決が確定した場合では、認知された子供の相続分は2分の1となります。

7-2-4 行方不明者がいる場合にはどのようになるのですか。

相続が開始した場合に、相続人の中に行方不明者がいる場合があります。
遺産分割協議やその他の相続手続きをする場合、相続人全員の合意が必要になりますので、これらの手続きができないことになります。
このような場合には以下のような方法を取ることになります。

①不在者の財産管理人の制度
他の相続人は家庭裁判所に不在者の財産管理人の選任の申し立てをします。
そしてこの財産管理人を含めて遺産分割協議を行うことになりますが、遺産分割協議の成立については家庭裁判所の許可が必要になります。
そして遺産分割協議が成立すると不在者の財産は財産管理人が預かることになります。

②失踪宣告
帰ってくる可能性が極めて低い場合には、法律上、不在者を死亡したものとして扱う方が良い場合があります。
行方不明者がその住所を去ってから7年以上経過している場合に、家庭裁判所に申し立て、それが認められれば、行方不明となってから7年が経過した時点で死亡していたとみなす手続きを失踪宣告といいます。
失踪宣告がされれば、相続の手続きにおいて、その者が死亡していた場合と同様に扱うことになります。
もし後日、本人が戻ってきた場合には、失踪宣告の取消を家庭裁判所に請求することができます。

7-2-5 法定相続情報証明制度とは

全国の登記所(法務局)において,各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。
現在,相続手続では,お亡くなりになられた方の戸除籍謄本等の束を,相続手続を取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要があります。
法定相続情報証明制度は,登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束を提出し,併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を出していただければ,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付します。
その後の相続手続は,法定相続情報一覧図の写しを利用いただくことで,戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。

本制度を利用することができる方(申出人となることができる方)は,被相続人(お亡くなりになられた方)の相続人(又はその相続人)です。民法(明治29年法律第89号)における相続人の範囲は,こちら(よくあるご質問)を参考にしてください。

また,本制度の申出は,申出人からの委任によって,代理人に依頼することができます。委任による代理人については,親族のほか,弁護士,司法書士,土地家屋調査士,税理士,社会保険労務士,弁理士,海事代理士及び行政書士に依頼することができます。
(法務省:「法定相続情報証明制度」についてより)

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