遺産分割後の税務

14-1 所得税では次の手続きが必要です

遺産分割協議が終了した後に、所得税ではどのような手続きが必要になるのでしょうか。
相続の開始した年、被相続人について確定申告の必要がある場合には、その申告期限は相続開始の日から4ヶ月以内となります。
例えば9月15日が相続開始日であった場合、4か月後の翌年1月15日が申告期限になります。
その年の3月15日までに相続が開始した場合には注意が必要になります。
相続開始の前年分と相続開始の年分の2つの確定申告が必要になりますが、いずれの場合もその申告期限は7月15日になります。
被相続人の事業を継承した相続人が青色申告で申告したい場合には、被相続人の事業に関する青色申告の効力は引継ぎになりません。
その相続人は新たに青色申告の申請書を提出する必要があります。
この場合、相続開始の日によってその申請期限が異なってきますので、提出漏れの無いように注意をしてください。

13-3-1 相続開始から遺産分割前の収益はどのようにして分けますか

被相続人が生前にアパート経営を営んでいたような場合において、相続開始から遺産分割前までに受け取った家賃はどのようにして分ければよいのでしょうか。
この期間に受け取った家賃は相続人の法定相続分に従って取得したものと見なされ、要した費用についても同様に法定相続分に従って帰属したものと見なされます。
その後の遺産分割によって特定の相続人がアパート経営を引き継いでも、遡ってこの取り扱いを変更する必要はありません。

14-2-1 消費税の納税義務判定

遺産分割協議が終了した後に、消費税ではどのような手続きが必要になるのでしょうか。
まず相続人について消費税の納税義務があるのか、ないのかの判定が必要です。
被相続が消費税の納税義務者だった場合、その事業を承継した相続人は、被相続人の基準期間(2年前)を相続人の基準期間として納税義務の判定を行います。
例えば課税事業者である被相続人甲について令和3年に相続が開始した場合で、事業を承継するのが相続人乙だったときは、乙の令和3年の納税義務判定は甲の令和元年の課税売上高が1,000万円を超えていたかどうかで判定します。
なお被相続人が行っていた課税事業について相続人間で未分割である場合の納税義務の判定は、各相続人が法定相続分に応じて相続をしたものとみなして被相続人の基準期間の課税売上高を按分します。そのため、未分割の場合には、相続人全員が免税事業者になることもあり得ます。
次に令和4年の納税義務の有無は令和2年の甲と乙の課税売上高を合算して判定し、令和5年の納税義務の有無は令和3年の甲と乙の課税売上高を合算して判定します。

14-2-2 消費税関係届出(関課税選択届出等)

被相続人が消費税の簡易課税制度を採用していた場合、その効力は事業を承継した相続人には引き継がれません。
そのため事業を承継する相続人が簡易課税制度を採用する場合には、新たに簡易課税制度の選択届出が必要になりますが、提出期限に注意が必要です。
相続開始年の課税関係ですが、年初から相続開始の日までは被相続人が計算主体になりますので、新たに簡易課税制度の選択は必要ありません。
相続開始から4ヶ月以内に所得税と同様に消費税に申告が必要になります。
次に相続開始の日から年末までの課税関係ですが、これは相続人が事業主体になるので、新たに簡易課税制度選択届出書の提出が必要になり、その期限は相続開始年の年末になります。
事業が未分割の場合で、各相続人それぞれ簡易課税制度を選択する場合には、それぞれ選択届出の提出が必要で、その期限は上記と同様です。
また相続開始の翌年以降に新たに簡易課税制度を選択する場合には、相続開始年の年末までに簡易課税選択届出書の提出が必要になります。

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