土地・建物の評価

12-1-1-1 まず権利関係を確認することから始めます。

まず、ご本人(被相続人となる方)が所有している不動産を確認しなければなりません。
そのためには区役所および市町村役場に出向いて固定資産税の名寄帳と固定資産税評価証明書を取り寄せます。
その名寄帳と固定資産評価証明書をもとにして、法務局においてすべての不動産の全部事項証明書と公図を取得します。
また使用している状況で権利関係が異なってきますので、自宅として使っているのか、貸しているのかなどの権利関係を確認し、貸している場合にはその不動産賃貸借契約書などの保存状況を確認することが必要です。

12-1-1-1-1 宅地の評価方法

土地の評価方法は、宅地、田、畑、山林などといった土地の地目別に、かつ地目と実際の使用状況が異なる場合には、課税時期の現況により評価します。
評価の単位は、一体的に使用されている一団の土地ごとに、その使用状況により、自用地、貸宅地、貸家建付地などに区分して評価します。
また地積も課税時期の現況によります。
よくあるのが縄延びといわれるケースです。
登記上の地積よりも実際の地積が広くなっている場合で、このようなケースでは現地調査や実測図などの入手により、正しい地積を把握することが必要になります。
宅地の評価の方法は、路線価方式か倍率方式です。

まず路線価方式ですが、国税庁のホームページにおいて毎年7月1日にその年の1月1日の路線価が公表されますので、その土地に付けられている路線価を調べます。
その路線価を、その土地の間口距離や奥行距離、土地の形状により修正を行います。
そして修正された路線価に地積を乗ずることにより評価額を求めます。

路線価が付されていない地域は倍率方式になりますが、これも国税庁ホームページに倍率が公表されています。
倍率方式の場合には、その土地の固定資産税評価額に、地域ごとに定められた倍率を乗ずることにより評価額を求めます。

12-1-1-1-2 店舗敷地の評価方法

自分用に使っている土地(自用地)の上に、1階には自分のお店と、2階は自分の住まいが建っているような場合については、居住用、事業用かにかかわらず全体を一団の土地として評価することになります。

12-1-1-1-3 貸地の評価方法

土地を他人に貸して、その土地を借りた人(賃地人)が自分の家を建てているような場合に貸宅地の評価をします。
貸宅地の評価方法は、路線価方式や倍率方式で計算した評価額から、借地権の価額を差し引くことにより評価額とします。
借地権の価額は、通常の評価額に借地権割合(借地人の権利の割合)を乗ずることにより計算します。
借地権割合は路線価図ではAからGの記号により表示され、倍率表ではパーセントにより表示されています。
借地権割合は、地域によりますが90%から30パーセントです。

12-1-1-1-4 アパート敷地の評価方法

自分の土地に自分でアパートを建てている場合には貸家建付地の評価をします。
貸屋建付地は、路線価方式または倍率方式で計算した評価額から、その評価額に借地権割合と借家権割合と賃貸割合の3つの割合を乗じた額を差し引くことにより計算します。
借家権割合は原則30%、賃貸割合は実際に賃貸している現況の割合によります。

12-1-1-1-5 農地、山林の評価方法

農地は農地法に定められている区分により評価します。
地域により、純農地、中間農地、市街地周辺農地、市街地農地の4区分に分けられています。
評価の方法は、倍率方式と宅地比準方式の2種類です。
倍率方式は固定資産税評価額に、地域ごとに定められた倍率を乗じて計算します。
宅地比準方式はその農地を宅地とみなした場合の1㎡当たりの価額を計算し、そこから宅地に造成するための費用(造成費用)を差し引いて計算します。
農地は農地法の制限により、農地以外の利用や売買は基本的にはできませんので、税金の面でもその評価は軽減されています。

相続税法基本通達に定める山林の評価方法には、純山林、中間山林そして市街地山林の3種類があります。
純山林は、市街地から離れている山林で、倍率方式の評価つまり固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率を乗じて計算します。
中間山林は、市街地郊外や別荘地などにある山林です。
これも固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率を乗ずる倍率方式で計算します。
市街地山林は、都市計画法上の市街化区域内にある山林です。
市街地として開発されるべき地域内にある山林なので、評価方法も宅地比準の価額から宅地とするための造成費用を差し引くことにより計算します。
しかしこの宅地比準方式で計算した評価額が、あまりに造成費用が多額であるために、純山林としての評価額を下回ってしまう場合や、急傾斜地であるために宅地造成が不可能と認められるような場合には、近隣の純山林の価額に準じて評価することになります。

12-1-1-1-6 借地権の評価方法

他人から土地を借りて自分の所有する建物を建てている人(賃地人)の土地上の権利を借地権といいます。
借地権の評価は、その土地の自用地として評価した評価額に借地権割合を乗じて計算します。
この借地権割合は路線価地域では路線価図にAからGの記号により表示され、倍率表ではパーセントにより表示されています。
借地権割合は、地域によりますが90%から30パーセントです。
また借地権には普通借地権、定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権、一時使用目的の借地権などの5種類ありますが、ここでは建物の所有を目的とする普通借地権について説明しています。
一方、借地権慣行がない地域においては借地権価額を評価しないことになっています。
路線価図ではその地域の記号が無表示になっています。

12-1-1-1-7 配偶者居住権とその評価方法

夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者が住み慣れた住居で生活を続けるとともに、その生活資金として一定額の預貯金等を確保したい、と要望されるケースが多く見受けられます。
このような希望に沿う選択肢として、所有権ではない配偶者居住権という新しい制度が、民法の改正により創設され、2020年4月1日以降に開始した相続から認められます。
配偶者居住権とは一身専属権であり、その権利を譲渡することはできず、また配偶者が死亡した場合には消滅して相続の対象にはなりません。
またその存続中は賃料を支払う必要はなく、その住居を無償で使用できます。
この制度の背景には、被相続人の相続人が、配偶者と先妻の子であるような場合で、共同相続人間において遺産分割を争うようなケースが想定されているようです。
このような場合に、配偶者は住居の配偶者居住権と一定額の預貯金等を確保し、先妻の子は住居の所有権とその他の財産を確保することで、遺産が円滑に分割される可能性が高くなります。
注意をすべきは、この配偶者居住権は、被相続人が配偶者以外の者と居住建物を共有していた場合には設定できません。
配偶者居住権の設定登記は、建物に対して行います。
そして登記することにより第三者に対抗できるようになります。
その登録免許税は、建物の固定資産税評価額に対して1,000分の2の税率です。(2020年現在)
配偶者居住権の評価は、建物と敷地に区分して配偶者が取得する居住権という権利の部分を計算します。
建物と敷地を所有権者が取得する分と配偶者(居住権者)が取得する分に区分しますが、その計算方法は、配偶者の平均余命年数などを使用して計算します。
平均余命年数は計算上のことで、実際の生存年数とは関係はありません。
配偶者が死亡し、配偶者居住権が消滅すると、その目的とされた土地と建物は、所有者の完全な所有権となります。配偶者が死亡して居住権が消滅しても、その時に相続税の課税関係は生じないことになっています。
ただし、存続期間の途中での合意解除などをした場合で、その居住権の価値に応じた金銭授受がない場合には贈与税の課税がされることになります。
配偶者居住権については、法律ができたばかりであることから、今後もろもろの問題が出てくるのではないかと思われます。
くれぐれも安易な判断をなさらないよう、税務署や税理士にご相談することをお勧めします。

12-1-1-1-8 配偶者短期居住権とその評価方法

配偶者短期居住権も、2020年4月1日以降の相続開始により民法改正により創設された制度です。
相続開始時に被相続人の家に無償で住んでいた配偶者は、遺産分割が成立するまでの日、又は相続開始時から6ヶ月が経過した日のいずれか遅い日までの間における、配偶者の「短期的な」居住権を保護するもので、無償でそのまま住むことができます。
当然のことのように感じますが、民法で新設された権利です。
配偶者短期居住権の相続税評価はゼロです。

12-1-1-2 建物は固定資産税評価額で評価します

建物(家屋)は、自分で使っているか、貸しているかにより 評価方法が異なります。
自分で使っている場合には、固定資産税評価額に1.0を乗じて計算します。
つまり相続税の評価額は固定資産税評価額そのものです。
固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されていますが、わからなければ市区町村役場等で固定資産評価証明書を発行してもらいます。
建物を貸している場合には、貸家としての評価方法になります。
評価方法は、
固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合) で計算します。
上記の借家権割合は各国税局で決められていて、通常30%となっています。
建築中の建物の評価方法は、支払った建築費用の合計額に70%を乗じて計算します。
建物が未完成のため固定資産税評価額はありませんので、建築にかかった費用の合計額で計算することになります。

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