相続税申告・納付

17-1 相続税申告期限と申告方法は次のようになります

遺産の総額が遺産に係る基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える場合で、納付する相続税額があるときは相続税の申告をする必要があります。
注意が必要なのはこの計算をする場合、小規模宅地等の相続税額の計算特例と配偶者の税額軽減の規定を適用しないで計算をすることです。
この二つの規定を適用すれば相続税額がゼロとなる場合には相続税の申告書を提出しなければなりません。これらの特例は申告することを条件に認められるからです。
次に申告の期限ですが、相続税の申告は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告をすることが必要です。
もう少し正確にいいますと「自己のために相続の開始があったことを知った日」の翌日から10か月の期間をいいます。
ですから財産を遺贈された人は、その遺贈されたことを知った日から申告時期が始まり、認知症のため自分で判断のできない相続人に成年後見人が選任された場合には、その選任された日から申告時期が始まります。
相続税の申告をしなければならない相続人が2名以上いる場合には、申告書をそれらの相続人の連名で提出することができます。

17-2 納税資金の確保は大丈夫ですか

相続税はその納付期限までに金銭で全額を一時に納付することが原則となっています。
相続財産に預貯金や容易に換金できる有価証券などの財産が多くある場合には、納税に苦労をしないのですが、相続財産のほとんどが不動産などである場合には、計画的に納税資金を確保する必要があります。
例えば、アパートと敷地などの収益物件を相続したのであれば、そのアパート・敷地を担保にして金融機関から借り入れして納税し、その後、アパートの家賃で返済をしていくという方法があります。
相続税額が多額なためそのような方法では間に合わないケースでは、相続した不動産の一部を売却することで納税資金を確保します。
この場合、売却した不動産にはすでに相続税が課税されているうえに、さらに売却による利益部分には譲渡所得税が課税されることになります。
二つの税金のダブル課税になりますので、相続した不動産を3年以内に売却した場合には、その不動産にかかっている相続税を譲渡所得税の計算のうえで控除する計算の特例があります。
いずれにしても相続財産のほとんどが不動産である場合には、早期にかつ綿密な納税計画を立てる必要があります。

17-3-1 納付遅延と延滞税

相続税が納付期限までに完納されない場合には、その未納税額に対して罰金的な意味をもつ延滞税が課税されます。
延滞税の税率は、納付期限の翌日から2か月を経過する日までと、その後の期間とで税率が変わってきます。
税率自体は市中金利に連動して変わりますが、令和3年1月から12月においては、前者の税率は2.5%、後者の税率は8.8%となっています。

17-3-2 延納

相続税を金銭で全額を一時に納付することができない場合には、未納税額について延納制度を利用することができます。
延納制度を利用するためには、相続税の申告期限までに延納申請書を税務署に提出し、また延納のための担保を提供しなければなりません。
担保には土地、建物、国債、社債、上場株式などを充てることができますが、担保の提供手続きは、その担保財産の種類によって異なります。
延納の期間は、相続財産のうちに不動産の占める割合によって、5年から20年の間で5年刻みの年数が定められています。
ただし延納税額が50万円未満(不動産等の割合が50%以上である場合には150万円未満)であるときは、その延納期間は、延納税額を10万円で割って計算した年数(1年未満の端数は1年とします。)までとされます。
延納制度を利用した場合には、利子の意味での利子税が課税されます。

17-3-3 物納

相続税は亡くなった人の財産に課税(財産課税)する税金ですから、金銭で全額を一時に納付することが難しいケースがあります。
このような場合に延納を利用するのですが、それでも金銭で納付することが困難な場合に物納という方法があります。
物納は相続税の課税価格の計算の基礎になった相続財産自体で納税をする方法ですが、物納に充当できる財産には限定があり、また物納に充当できる順位が決められています。
物納財産の限定条件は
①相続により取得した財産で国内にあること
②管理処分不適格財産でないこと
③物納申請財産の種類及び順位に従っていること、などです。
財産の物納の順位は
第1順位 不動産、船舶、国債、地方債、上場株式等、不動産
第2順位 非上場株式
第3順位 動産、です。
物納の申請期限は、物納を申請しようとする相続税の納付期限までで、手続きは相当に急がなければなりません。
また注意をしなければならないのは、小規模宅地等の課税価格の計算の特例を受けた不動産を物納する場合、その収納価額は特例適用後の金額になりますので、納税者には相当に不利な価額になります。
物納の申請をして承認された場合は良いのですが、却下された場合にはその日から20日以内に延納の申請をすることができ、また物納の再申請もすることができます。

17-4 連帯納付義務とはどのようなことですか。

相続税は、相続又は遺贈によって財産を取得した者が納税をします。
しかし財産の取得者が納税をしない場合には、その相続で財産を取得した他の相続人や他の受遺者が、その受けた利益を限度として代わって納税をしなければなりません。
これを連帯納付義務といいます。
財産を取得した者が納税をしない理由は、単に相続税の納税を怠けていた場合の他、相続財産のすべてを何かの理由で使ってしまった場合などがありますが、相続税が死亡した人の財産に課税する税金ですので、その納税は相続で利益を受けた者全員に連帯して責任を負わせようとする趣旨です。
自分は相続税の納税を終えていても、他の相続人や受遺者が納税を完了するまでは安心できませんね。

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